海外中央銀行は利上げムード? 

——トランプ大統領が利下げを求めていても、実際には思ったほど下げられないというリスクは見ておくべきですね。

唐鎌:FRBを含む海外中央銀行が利下げを停止し、「次の一手は利上げだ」と言い始めることが、日本銀行にとって最も大きなリスクだと思います。今後1~2カ月で、そう考える人が増えてくるかもしれません。

FRBのパウエル議長(写真:ロイター/アフロ)

——それは円安が進むからでしょうか。

唐鎌:その通りです。建前としては色々な変数に言及があるものの、日銀が利上げを検討する理由は、結局は為替、具体的には円安抑制に集約されつつあるように見えます。裏を返せば、「利上げをすれば円安は止まるはずだ」という前提があるわけですが、それは海外の中央銀行、とりわけFRBが利下げ局面にあることが前提になっています。

 もし海外が利上げに転じれば、半年かけて0.25%ずつ利上げする日銀では太刀打ちできません。海外の中央銀行は、一度利上げを始めると、まとまった期間、同じ方向で動きます。そのペースに日本が合わせられるほど、日本の政治や社会は強くありません。

 だからこそ、海外の中央銀行が利下げ局面を一巡し、再び利上げに戻ることが、日銀にとって最も怖いシナリオです。実際、ECB(欧州中央銀行)の記者会見ではすでに「利上げの議論をしたのか」という質問が出ており、利上げ再開の観測も浮上しています。これが米国に波及するのも、遠い話ではないでしょう。

河田皓史・みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部チーフグローバルエコノミスト(以下、敬称略):唐鎌さんがおっしゃったように、利下げが思ったほど進まない、場合によっては利上げに転じるという見方は、為替を通じて日本に大きな影響を与えます。円安を嫌う状況の中では、最大のリスクと言えるでしょう。