理事長になって分かった異常な業界構造

豊田:私自身、住んでいたマンション管理組合の理事長になったことがきっかけです。

 組合の理事長になるつもりは毛頭なく、ただ輪番制で理事の順番が回ってきて、さらにくじ引きで理事長になっただけです。

 ある日、管理会社から私に対して「塗装工事を発注するから承認して欲しい」という申し出がありました。

 その塗装工事は前年の総会において管理会社1社だけの見積もりだったことから総会承認が下りず、相見積もりを取ってみようということになっていたのです。

 ところが、驚くべきことに、その相見積もりをとったのが件の管理会社自身だったのです。「管理会社の見積もりのほうが安い。総会決議通りに相見積もりしたので、管理会社への発注で承認して欲しい」と、新任で何も分からない理事長の私に承認するように力強く促してきました。

 この時点で、「この業界はどこかおかしい」と思いました。この管理会社の杜撰な対応に理事会のほかの理事が激怒して、自分たちで相見積もりを検討しようということになりました。

 結局、建物の現状の劣化状況を調査したところ「工事自体が不要」ということが判明し、工事自体が見送りになりました。こういう不条理がビジネスとしてまだ罷り通っているのかと驚いたのです。

 そこで、 「よりフェアな取引が実現するビジネスがあれば良いのに」と思ったのが、スマート修繕創業のきっかけです。

 私達は正義のためにスマート修繕を運営しているのではありません。スマート修繕のほうが現状のものよりもより良い選択肢であり、世の中のためになる、ビジネスになると信じて、日々運営しています。

 私達の活動が、業界の体質改善に少しでも寄与できればと心から祈っております。