
マンションや戸建てを「ついのすみか」として購入する人も少なくないが、ライフスタイルやライフステージの変化に応じて、いずれは売却を前提に取得する人もいるだろう。新築で購入した場合、どのくらい先を目途に売却するのが理想的なのか──。住宅ジャーナリストの山下和之氏がアドバイスする。
>>【グラフ】中古マンション&中古戸建住宅の築年数別成約価格
成約率が最も高い「築11~15年」の中古マンション
いきなり結論から言うと、マイホームを中古として仲介市場に出した場合、成約率が一番高いのは「築11~15年」だ。築3~5年程度の築浅のほうが売りやすいのではないかという気もするが、そんなことはない。
特にいま、築浅マンションは新築マンション減少の中で価格が高騰し、エリアによっては新築マンションの相場価格より高い値付けが行われるようになっている。中古マンションの最大の魅力である割安感が失われ、購入をためらう消費者が増えている。
それよりは、多少築年数が長くなっても維持管理の行き届いた物件で、かつ割安感のある築11~15年程度のマンションのほうが、買い手がつきやすいわけだ。それを実証するデータもある。
東日本不動産流通機構が毎年「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」という調査を実施しているが、その中で仲介市場に売りに出された物件のうち、何パーセントが成約したかを築年帯別に集計している。
2024年の結果が【グラフ1】だ。マンションでは、「築0~5年」「築6~10年」「築11~15年」が30%台で、中でも「築11~15年」が36.2%と最も高くなっている。それが、「築16~20年」になると26.7%と20%台に下がり、築26年超は10%台になってしまう。なお、仲介に当たっての媒介契約は一般的に3カ月なので、その間に成約できなければ値下げなど仕切り直しか、取りやめになる。

築11~15年の新規登録マンションなら、3件に1件は登録時の条件で成約しているが、築21年を過ぎると4件に1件程度に、築21~30年になると5件に1件程度になり、築31年を過ぎると新規登録住宅の条件で成約できるマンションは、8件に1件か9件に1件程度に減ってしまう。
もちろん、成約まで時間がかかれば市場で野ざらしとなり、少しでも早く売却するためには一旦市場から取り下げ、思い切った値下げをしないと売れない状態になってしまう。