首都圏の中古マンション価格は頭打ちが近い?(写真はイメージ)

(山下 和之:住宅ジャーナリスト)

 首都圏の中古マンション価格が上がっている。2022年度の成約価格の平均は4343万円で、2012年度の2515万円から10年間で72.7%も上がっている。だが、新築マンション価格以上のハイピッチで上昇しているため、中古マンションの割安感が次第に失われつつあり、そろそろ上昇ピッチに歯止めがかかるのではないかという観測が強まっている。買い替えなど目指して売却を考えている人は、高く売れるいまのうちに早めに行動を起こしたほうがよさそうだ。

在庫件数が減っているのに価格は高騰していない

 不動産情報を提供するマンションリサーチでは、独自の指標を用いて定期的に中古マンション価格のトレンド予測を行っているが、2023年5月までの首都圏の中古マンション価格を分析した結果、「一部のエリアを除き、主要都市の中古マンション価格に頭打ち感がみられる」としている。

 首都圏の中古マンション市場では、【グラフ1】にあるように、在庫数が減少すると同時に、在庫の回転率も低下している。


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 在庫回転率というのは、売り手に対して買い手がどれくらいいるかを示す指標で、数値が高いほど需要が高いことを意味し、回転率が低いと需要が弱いことを示している。首都圏の回転率は2021年の春から夏にかけてがピークで、その後低下傾向が続いている。その分、需要が低下しているとみることができる。

 一般的に価格は需要と供給のバランスで決まるため、在庫件数が減少して供給が減れば、需要が変わらない限り、価格は上がるものだ。しかし、首都圏の中古マンション市場では、在庫数が減っているにもかかわらず、在庫回転率も低下しており、需要が弱まっていることを示している。

 市場原理からすれば、在庫件数が減少すれば需要が供給を上回って、本来なら価格が高騰していいはずだが、このところ、上がってはいるものの、高騰と呼べるほどの上がり方ではない。このため、上昇ピッチに歯止めがかかり、マンションリサーチでは「頭打ち傾向」がみられるとしているわけだが、本当にそうなのだろうか。