「談合」が横行する大規模修繕工事(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)
マンションの大規模修繕をめぐるトラブルが相次いでいる。2025年は、住民になりすまして自社の工事につなげようとした事件や、設計事務所と工事会社が談合して工事費を釣り上げる事例などが世間を騒がせた。そうしたなか、DeNA発のベンチャー・スマート修繕(東京都港区)は、こうした業界構造をテクノロジーで変えようとしている。同社代表取締役の豊田賢治郎氏は「談合構造が温存されている以上、適正価格での工事は実現しない」と断言する。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
大規模修繕工事が高すぎる
──スマート修繕は大規模修繕工事のプロセスを透明化し、素人同然のマンション管理組合が適切な費用で工事を発注できる仕組みをつくろうとしています。豊田さんから見て、大規模修繕工事で「ぼったくり」に近いことが起きる理由をどのように分析していますか。
豊田賢治郎氏(以下、敬称略):大規模修繕工事を手掛ける設計事務所・マンション管理会社が、工事会社からの「リベート」(キックバック)を見返りに、「チャンピオン」(出来レースで受注がすでに決まっている工事会社)に高値で受注させるケースが少なからず存在します。
管理組合が、業界の都合で損をするという由々しき事態になっているのです。
設計事務所と工事会社の利害が切っても切れない関係である以上、工事費が適正価格より高くなってしまう構造はなくなりません。
当社の調べでは、大規模修繕工事において、市場価格より2〜4割、時には2倍近くの金額となっているケースもあります。
ではなぜ、大規模修繕工事においてリベートが横行しているのか。リベートの存在が最終的に管理組合を損させてしまうのか。それは、業界構造を紐解けば理解できます。
豊田賢治郎 スマート修繕代表取締役 1981年7月13日生まれ、奈良県出身。新卒で旭化成に入社、エレクトロニクス材料のマーケティング・セールスに従事。2011年~2015年は中国蘇州にマーケティング責任者として赴任。2015年、帰任後にDeNAに入社。他社との共同事業の事業開発やアプリゲーム複数タイトルのプロデュースに従事。2020年より、DeNAで本業にフルコミットしながら「週末起業」のような形で、DeNA系VC「デライト・ベンチャーズ」において、「スマート修繕」事業のリサーチ・各種検証(沢山のヒアリングとテストサービス×2を実施)、事業立ち上げ。2022年1月より「スマート修繕」事業をDeNA系VC「デライト・ベンチャーズ」より1.5億円調達して、本格展開。
──どういうことですか?