安い設計事務所に依頼すると、損する?
豊田:前提として、基本的にマンション管理組合は、不動産事情や工事価格に詳しくありません。
組合が工事の発注先を決める際、「設計監理方式」という、設計事務所が工事・工事会社を一元的に決めるという手法が採られています。組合が設計事務所を選ぶプロセスにおいてはコンペ方式を採用することがほとんどで、管理会社を通して複数の設計事務所が応募してくるという形です。
この際、管理組合は「設計費用」「実績」といった数字で設計事務所を選びます。組合から見るとコンペの中で費用が安く、実績も豊富な設計事務所を選びがちですが、そこに「談合」のリスクが潜んでいます。
この時点で、工事費の具体的な金額までは決まっていません。ですから、どうしても管理組合は設計費用と実績で他社に優っている設計事務所を選ぶ傾向にあります。
設計事務所にとっては設計費用は安くても問題ありません。工事が決まり次第、工事会社からキックバックをもらえるからです。工事会社にとっても、キックバックの対価として、競争なく高値で工事を受注できるのは非常にメリットが大きいのです。
こうして「安い設計事務所を選んだ」とぬか喜びしているマンション管理組合が、設計事務所を決めた後に、工事費の詳細を初めて見るわけです。「高いのかな、この金額は。競争入札したし大丈夫だろう」と組合は特に追及することもなく、工事は終わります。
管理組合からは見えない業界の裏側(写真:years/イメージマート)
このスキームを有効活用する設計事務所は、どんどん競争力をつけていきます。今度は別のマンションに対して、より安い金額で設計費用を提示することもできますし、工事会社からキックバックをもらえる以上、収益に困ることもない。
このような形で長年、大規模修繕工事の現場では談合が常態化してきました。
──スマート修繕ではどのようにして、適正価格での大規模修繕工事を実現しようとしているのですか。