国際原油価格の上昇を待つしかないロシア
金利を上げると貨幣需要が減り、貨幣供給も減るので、外貨の量が一定だとすると、ルーブルは高くなるというのがセオリーだ。とはいえ、ロシアでこのメカニズムは働いていないというのが、レシェトニコフ財務相の見解である。
ウクライナ戦争が終わらないので、戦費調達のために人民元を売ってルーブルを回収するのは仕方がない。そこで、2025年12月8日に、ロシア人と友好国の国民による海外送金の上限を月100万ドルとする規制を撤廃した。
ロシア人、中国人、インド人が外国にドルや人民元を送金するとき、ルーブルを売ってドルや人民元を買うので、ルーブル安になるだろう。個人による外貨流出によって、ダブついた外貨という相対的過剰資本を減らそうというのだ。
ロシア財務省・中央銀行がルーブル安にもっていくことはかなり難しいので、ルーブル安による歳入増の見込みは薄い。
あまり課税せずに戦争を継続するには、国際原油価格の上昇を待つしかない。中東での紛争が激化したり、米国がベネズエラを攻撃したり、アフリカの産油国でクーデターが起こったりするなど、世界中の産油地の混乱を、プーチン大統領は待ちのぞんでいるだろう。
安木新一郎(やすき・しんいちろう)
函館大学商学部教授、択捉島水産会理事
専門:ロシア経済、貨幣史
略歴:昭和52(1977)年兵庫県生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得満期退学。経済学修士。外務省在ウラジオストク日本国総領事館専門調査員などを経て、2023年より現職。
著書:『ロシア極東ビジネス事情』(東洋書店、2009年)。『貨幣が語るジョチ・ウルス』(清風堂書店、2023年)など多数。