中国、ロシア、北朝鮮の結束をアピールした軍事パレード(写真:新華社/アフロ)
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(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

 ロシア経済の失速が鮮明である。連邦統計局によると、4-6月期の実質GDP(速報値)は前年比1.1%増と、前期(同1.4%増)から成長が鈍化した(図表)。これで2025年前半の成長率は同1.2%増となり、2024年通年の4.1%増から急減速したことになる。さらに、経済発展省が発表した7月の月次実質GDPは、前年比0.4%増にとどまった。

【図表 ロシアの四半期ごとの実質GDP】

(出所)ロシア連邦統計局

 要するに、今のロシア経済は実質的にゼロ成長の状態にある。これまでロシア経済は、軍需が民需を圧迫しつつも、経済活動をけん引することで高成長軌道を維持してきた。ただ、その構図は今年に入って明確に息切れしたようだ。軍需の膨張が続いているというより、軍需が飽和した状態であるために、景気を支えきれなくなっているようだ。

 どういうことか。

 停戦に向けた機運が高まらない中、ロシアとウクライナの交戦は続いている。そのためロシアの軍需は膨張したままだが、一方で財政的な余力がないため、軍需は高止まりしている。ただし、戦争に伴う軍事ケインズ効果は、戦争が持続的に拡大しない限り徐々に失われる。それゆえに、軍需の景気牽引(けんいん)力は弱まっている。

 反面で内需は低調を余儀なくされている。とりわけ深刻なのが耐久財販売の不振で、4-6月期の新車販売台数は前年比33.4%減と底割れ状態となった。高インフレ環境が長期化したことで家計の購買力が低下した結果と見受けられるが、その高インフレも、経済制裁や軍需向けのモノやサービスの生産が優先される環境の下で進行した現象だ。

 また外需も低迷している。4-6月期のドル建て名目輸出は前年比5.9%減と、前期(同6.8%減)と同様に厳しい。最大のパートナーである中国の景気が低迷していることに加えて、いわゆる「トランプ関税」の影響などを受けたためだろう。このように内需や外需が不調となる中で、軍需も膨張が止まったため、景気は失速したと整理される。