抗日戦争勝利80周年記念軍事パレードの予行演習で飛行する「Y-20」輸送機(8月24日撮影、写真:ロイター/アフロ)
中国軍、2035年までに台湾封鎖
接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力完備目指す
フォーカス・台湾(8.29配信)によると、台湾国防部(国防省)は8月29日、中国人民解放軍(中国軍)が2035年までに軍の全面的な近代化を実現させ、対台湾封鎖や接近阻止・領域拒否(A2/AD)などの能力の完備を目指しているとの「2025年中国共産党軍事力報告書」を立法院(国会)に提出し、その概要を公表した。
衆知のところであるが、米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官(当時)は2023年2月、ジョージタウン大学主催の行事で講演し、中国の習近平国家主席(共産党総書記)が「2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう軍に命じたことを指すインテリジェンス(情報)を把握している」と明らかにした。
その際、「(習近平氏が)2027年や他の年に侵略すると決めたわけではない」と断りつつ、抑止に向け、台湾への軍事支援強化の重要性を訴えた。
その後の2024年12月、米国防総省が発表した「中国軍事力に関する報告書(China Military Power Report)」は、習近平主席が過去18か月間で軍の腐敗を一掃してきたことにより、2027年以降の軍の近代化目標の達成が妨げられる可能性があると指摘した。
今般の台湾国防部による中国の軍事力見積りは、バーンズ元CIA長官が指摘した2027年危機説が、約2年半の間に2035年まで遅延する可能性を示唆したものと受け止められる。
このことは、危機の矢面に立たされている台湾はもとより、日米など関係国の今後の安全保障・防衛政策に大きな影響を及ぼす可能性がある。
最近ささやかれている習近平主席の立場の揺らぎや軍に対する不信、あるいは軍との不仲悦などを踏まえ、注意深く観察して行くことが求められよう。
中国軍の軍事近代化の遅れはその腐敗にあり
前掲の通り、米国防総省の2024年「中国軍事力に関する報告書」は、中国軍の腐敗によって軍事近代化が遅れる可能を指摘した。
166ページにわたる報告によると、中国軍内における不祥事はあらゆる部門に及んでおり、軍の腐敗は依然として重大な問題として残っている。
習近平主席は2012年の就任以来、腐敗撲滅を最優先課題として掲げ、この1年で汚職関連の捜査により、少なくとも15人の高級軍高官と国防産業幹部を解任した。
習近平主席の反腐敗キャンペーンは、同主席が打ち出した2027年までの軍事能力開発というマイルストーンの達成を求められた中国軍に対する深刻な懸念を反映している、と報告書は指摘している。
報告書では、司令官の能力や部隊の即応態勢に関する欠陥のほか、状況の評価、上級当局の意図の理解、作戦上の意思決定、部隊の展開、不測事態への対応など、中国軍の士官(幹部)が改善する余地のある分野について述べている。
実戦の経験不足が、これらの欠陥の一因であると指摘している。