訪朝し金正恩主席と会談したプーチン大統領(2024年6月19日、写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮の国連制裁履行を監視する多国間制裁監視チーム

 北朝鮮に関する国連制裁措置の履行を監視する「多国間制裁監視チーム(MSMT:Multilateral Sanctions Monitor Team)」は5月29日、「武器移転を含む北朝鮮とロシアとの間の不法な軍事協力」と題した第1回報告書を公表した。

 MSMTは、日本、米国、豪州、カナダ、ニュージーランド、韓国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダの11か国で構成され、環太平洋から6か国、欧州から5か国が参加する西側連合チームである。

 2024年、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する制裁を15年間執行してきた国連安全保障理事会(安保理)北朝鮮制裁委員会(1718委員会)の専門家パネルの更新に際し、ロシアが拒否権を行使し、中国が決議を棄権したことで、同専門家パネルは同年4月に活動終了を余儀なくされた。

 MSMTはその間隙を埋めるために創設された。

 北朝鮮による制裁違反・回避を監視し、その事例の指摘・公表等を通じて関連安保理決議の実効性を担保して、国際社会による国連決議の完全な履行を後押しするのが目的である。

 国連決議の完全な履行は、あくまで北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めるものである。

 しかし、ロシアの拒否権と中国の棄権によって、北朝鮮による制裁違反・回避を監視する機能が破棄され、それが北朝鮮の国連決議無視の活動を一段と助長し、北朝鮮とロシア双方による不法な軍事協力を促進する伏線になったことは見逃せない重大事である。

 MSMT第1回報告書では、2024年1月から2025年4月までの期間を中心に、北朝鮮とロシアの間における武器移転やロシアへの北朝鮮兵士の派遣、違法な取引ネットワークといった、北朝鮮に関連する国連安保理決議に定められた制裁措置の違反及び回避に係る具体的な情報が初めて公的に明らかにされた。

 その概要は、以下の通りである。