万の兵・数百万の砲弾支援
外務省のホームページに掲載された「第1回報告書の概要(2025.5.29)」では、「露朝間の不法な武器移転及び関連する制裁違反」「関係者、ネットワーク及び輸送方法 」「違法な取引及びその他の制裁違反」の項目に沿って、北朝鮮とロシアの軍事協力の実態に言及している。
1 露朝間の不法な武器移転および関連する制裁違反
■北朝鮮からロシアへの武器移転
・2023年9月以降、北朝鮮は、ウクライナに対する戦争の支援として、ロシアに対して2万を超える軍需品のコンテナを供給した。
2024年中には、北朝鮮は少なくとも100発の弾道ミサイルおよび3個旅団分の重砲の構成品に加え、対戦車ミサイルも提供した。
・北朝鮮製弾道ミサイルには非北朝鮮製部品が使用されている。北朝鮮は制裁を回避し、外国製部品を第三国の中間業者から調達している。
■ロシアから北朝鮮への武器移転
・2024年11月以降、ロシアは北朝鮮に短距離防空システムおよび電波妨害機器を含む高度な電子戦システム並びにその運用知識を提供したとみられる。
・ロシアは北朝鮮に対し弾道ミサイルのデータフィードバックを提供することにより、北朝鮮の弾道ミサイル開発計画を支援している。
■北朝鮮兵士のロシア派遣およびロシアによる訓練
・北朝鮮は2024年終盤に1万1000人を超える兵士をロシアに派遣し、これらの兵士はロシアの部隊から砲術、無人航空機および基本的歩兵作戦に関する訓練を受けた。
北朝鮮兵士はロシアのウクライナに対する戦争を支援するため、ロシアの部隊とともに戦闘に従事した。
・2025年1月から3月には北朝鮮が3000人を超える兵士を追加で派遣したと評価した。4月には北朝鮮及びロシアの双方が北朝鮮による兵士の派遣を公に認めた。
2 関係者、ネットワークおよび輸送方法
・2024年6月の露朝包括的戦略パートナーシップ条約の署名以降、複数の国連制裁対象者がロシアを訪問した。
・北朝鮮からロシアへの武器移転は当初鉄道を用いて行われたが、その後砲弾の大規模な供給にはロシア船籍の船舶が、弾道ミサイルや発射台付き車両(TEL)といった機微かつ重要な機器については鉄道またはロシア軍の貨物航空機が用いられた。
3 違法な取引およびその他の制裁違反
・2024年3月から10月にかけて北朝鮮のタンカーがロシアから100万バレル以上の石油精製品を供給したとのシンクタンクによる分析がある。
一方、制裁委員会のウエブサイトでは安保理決議で定められた年間上限 50万バレルの60%程度しか供給されていないとされていることから、ロシアが北朝鮮に供給した石油精製品の一部しか制裁委員会に報告されていないと評価した。
・2024年、北朝鮮は労働者8000人分のビザをロシアに申請した。北朝鮮は2025年前半に数千人以上の労働者のロシアへの派遣を計画した。
・ロシアおよび北朝鮮は、南オセチアにおけるMRB銀行のルーブル建て口座を用いて、国連制裁対象団体であるフォーリン・トレード・バンク(Foreign Trade Bank)およびコリア・クワンソン・バンキング・コーポレーション(Korea Kwangson Banking Corporation)を通じた金融取引を積極的に行った。
報告書は、900万発もの大砲やロケットランチャーの弾薬が北朝鮮からロシアに輸送されたとしている。
また、北朝鮮の援助が「ロシアが重要な民間インフラに対する攻撃を含め、ウクライナの都市に対するミサイル攻撃を増加させるのに貢献した」と述べている。
他方、ロシアからは「北朝鮮に軍事資金と禁止されている弾道ミサイル開発資金が提供され、北朝鮮が2024年10月からロシアに派遣している1万1000人以上の部隊に、実戦的な軍事経験を積ませることができた」と指摘している。
そして、「少なくとも当分の間は、北朝鮮とロシアは国連安全保障理事会の関連決議に反して軍事協力を継続し、さらに深めるつもりだ」と報告書は評価している。