東アジアに及ぼす影響は甚大
日米豪韓台比の戦略的連携メカニズムの構築を
■「包括的戦略的パートナーシップ条約」の締結
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2024年6月、北朝鮮を訪れ金正恩朝鮮労働党総書記と会談した。
両首脳は事実上の軍事同盟である「包括的戦略的パートナーシップ条約」に署名した。
条約署名に当たり、金総書記は北朝鮮とロシアの関係が「新たな高いレベルの同盟関係」になった重要かつ歴史的な瞬間だと述べた。
今年4月、北朝鮮とロシアは、包括的戦略的パートナーシップ条約の一環として部隊派遣を確認したように、同条約が両国の軍事協力に基本的根拠を与えている。
同条約は、相互防衛条項が盛り込まれており、この条約の一方の当事国に対する侵略があった場合の相互支援について定めている。
北朝鮮の朝鮮中央通信によると、金総書記は3月に次いで6月4日、平壌でロシアのセルゲイ・ショイグ安全保障会議書記と会談した。
その際、北朝鮮は、ウクライナ侵略を含む国際問題でロシアを「無条件に支持する」方針を確認したという。
これは、あくまで外交上の相互主義に基づくものと考えられ、ロシアが北朝鮮に同様の支援を行うことも意味していると理解しておかなければならない。
■陸海空を経由する軍事的アクセスの強化
前掲の通り、北朝鮮からロシアへの武器移転は、鉄道、船舶およびロシア軍の輸送機が用いられた。
加えて、北朝鮮とロシアを結ぶ初の自動車橋の建設が今年4月末から始まった。
自動車橋の計画は、プーチン大統領が昨年、平壌を訪問し包括的戦略的パートナーシップ条約に署名した際に決定された。
この橋は、北朝鮮北東部の豆満江に架けられ、ロシアと北朝鮮の間にある唯一の陸橋となっている、ソ連時代に造られた鉄道橋「友情橋」の近くに建設され、2026年半ばまでに完成する予定という。
着工を祝う式典で、ロシアのミハイル・ミシュスチン首相は、この橋は「友好的な、よき隣人同士の関係を強化し、地域間協力を拡大したいという、共通の願いを象徴している」と演説した。
海空路と鉄道橋に加え、新たな自動車橋の建設によって露朝間の軍事的アクセスが一段と強化されることになり、両国の軍事的関係の一段の深まりを示している。
このように、北朝鮮とロシアは、「包括的戦略的パートナーシップ条約」を根拠に、両国の紛争事態に相互支援を行う協力関係を強めている。
また、軍事支援を具体的に強化するため、陸海空を経由する軍事的アクセスの構築に注力しており、相互支援の大動脈として活用されるのは間違いない。
それは、北朝鮮がロシアのウクライナ侵攻を支援しているように、朝鮮戦争の再発や東アジアにおける紛争時、ロシアが北朝鮮あるいは中国を全面的に支持し、強力な軍事支援を提供する可能性を示唆するものである。
日本としては、そのような事態を十分に想定しておかなければならず、日韓、日米韓の協力連携は不可欠である。
さらに、中露朝の合従連衡の下、最大の脅威である中国を念頭に、朝鮮半島から東シナ海および南シナ海を焦点とした戦場の拡大・広域化の可能性を踏まえ、日米豪、韓国、台湾、フィリピンなどを一つの戦域ととらえ、関係する同盟国・同志国が一致協力する戦略的連携メカニズムの構築は避けて通れない喫緊の課題である。