ルーブルが高止まりするメカニズム
ロシアでは100ルーブル/ドルが経済全体にとって好ましいとされているが、ルーブル相場を見ると、12月時点で80ルーブル/ドルを上回り、74ルーブル/ドルにまでルーブルが上昇している。
ルーブル安にするためには金利を下げるという方法が考えられる。実際、ロシア中央銀行は徐々に政策金利を下げており、9月15日には18パーセントから17パーセントに、10月27日には16.5パーセントに引き下げられた。とはいえ、ルーブル安になっていない。
ルーブルが高止まりしているのは、財務省がこれまで貯めてきた外貨を売ってルーブルを調達し、これを戦費に当てているからだ。
財務省は原油やガスを売って得た外貨を国民福祉基金NWFという形で蓄積してきた。現時点のロシアにとっての「外貨」とは米ドルでもユーロでもなく人民元だ。ドル建て、ユーロ建て資産もあるが、凍結されているので使えない。
財務省の本音としては、いちおう人民元を貯めてきたが、外為市場で他国通貨と交換可能なハードカレンシーではない人民元をNWFとして蓄積するというのは、好ましい状況ではない。なぜなら、中国企業ですらロシアとの決済に人民元ではなく物々交換(バーター)を求めており、人民元はいざというとき使えない可能性があるからだ。
理論的には、ルーブル安に持っていくためには、政策金利を下げてルーブル供給を増やすことが考えられる。しかしながら、金利を下げるとインフレ率が上がるので、プーチン大統領は承認しないのが現状だ。
2025年9月3~6日に、毎年恒例となった「東方経済フォーラム」が極東のウラジオストクで開かれた。9月4日、このフォーラムでロシア最大の市中銀行ズベルバンクのゲルマン・グレフCEOは、「ロシア経済は停滞しており、ロシア中央銀行が金利を引き下げなければロシアは景気後退に陥るだろう」と述べた。
これに対して、翌5日、プーチン大統領は「同意しない」と真正面から否定した。グレフ氏の「ロシア経済は停滞している」という主張は、金融機関が高金利に不満を感じているからであり、インフレ抑制には高金利が必要で、中央銀行はよくやっているというのが大統領のコメントだった。