米国による経済制裁の対象になったロスネフチ(写真:ロイター/アフロ)
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(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

 米国がロシアに対する圧力を強化している。

 米財務省外国資産管理室(OFAC)は10月22日、ロシア最大の石油会社であるロスネフチと同2位のルクオイル、ならびに両社の関連会社を、米大統領令14024号に基づく金融・経済制裁の対象に指定すると発表した。両社とその関連会社が米国内に保有する資産が凍結されることになった。

 米国のドナルド・トランプ大統領は、年明けに就任して暫くはロシアに対して懐柔路線を採っていた。ウクライナとの戦争を早期で停戦させることがその狙いだったが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による要求が過大だったために、米国は一転してロシアに対して強硬路線を採るようになった。今回の制裁強化は、その一環だ。

 ロスネフチやルクオイルを制裁の対象に指定したトランプ政権の狙いは、ロシア産原油の輸出を圧迫し、ロシアの歳入をひっ迫させるとともに、その継戦能力を低下させることにある。それでは、実際にロシア産原油の輸出が減るのかというと、確かに原油の輸出数量はそれほど減らないかもしれないが、輸出金額は相応に下振れすると予想される。

 いわゆるG7による制裁を受けて、ロシア産原油(ウラル原油価格)と国際原油価格(ブレント原油価格)の間には、一定の乖離が生じて久しい(図表1)。G7がロシア産原油の上限価格をバレル当たり60米ドルと設定したためだが、今年7月には欧州連合(EU)がそれを47.6米ドルに引き下げ、英国と日本もそれに追随した。

【図表1 原油価格の推移】

(出所)米エネルギー情報局、モスクワ取引所

 今回、米OFACがロスネフチとルクオイルに制裁を科したことで、両社と取引を行う第三国の事業者も制裁を科されることになる。いわゆる二次制裁の仕組みで、ロシア産原油は第三国の事業者にとって、さらにリスキーな原油になる。リスキーさが増した以上、ロシア産原油の取引価格は国際原油価格を一段と下回ると予想される。