分配論者として過激な主張を展開していたメローニ首相だが、財政運営は意外に手堅い(写真:ロイター/アフロ)
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(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

 10月4日、自民党の総裁選が行われ、高市早苗・元経済安全保障担当大臣が新総裁に選出された。現在、自民党は少数与党だが、野党が統一候補を擁立できる公算が小さいため、石破茂首相の後任として、第104代首相に就任する見込みとなっている。自民党で初めての女性総裁が誕生するとともに、日本の憲政史上、初の女性首相となる。

 保守派の女性首相というと、英国の故マーガレット・サッチャー氏(首相任期:1979年5月~1990年11月)が思い浮かぶ。先進国で初となる女性首相として、長期停滞が続いていた英国経済を復活に導いたサッチャー氏を模範とする女性政治家も多い。2022年にわずか1カ月半で退任したリズ・トラス元首相もそうだった。

 トラス元首相が就任したのは2022年9月だったが、その1カ月後にはイタリアでジョルジャ・メローニ首相が就任している。葉物野菜であるレタスの鮮度に劣る在任期間しかなかった英国のトラス元首相と対極的に、メローニ首相は現在に至るまでその職にとどまり、短命政権が続いたイタリア政治に久方ぶりの安定をもたらしている。

 故サッチャー氏、トラス元首相、メローニ首相、高市新総裁と、いずれも保守派の政治家である。高市新総裁をメローニ首相に準(なぞら)えて、短命政権が続く日本の政治の安定を期待する声があり、経済面でも有効な物価高対策が取られることへの期待が高まっている。では、高市新総裁はアジアのメローニ首相になれるのだろうか。