プーチン大統領が信じている“経済仮説”

 高金利のロシアでは、預金は集まるものの、民間企業が投資を控えるので銀行は貸し付けを増やせないでいる。また、国民もリスクの大きい株式を購入するより、リスクが小さく、金利の高い預金をそのまま持っておこうとする。そのため、株式売買も低調で、手数料を得られない証券会社も困っている。

 グレフ氏は閣僚も経験した優秀な実務官僚であり、プーチン政権を支えてきたブレーンである。一方、自由主義的な経済改革を推進してきたグレフ氏は、高金利に支えられた戦時経済を批判してきた。

 プーチン大統領は、金利と外国為替相場は無関係という仮説を信じている節がある。

 2024年10月22日に国営のインタファクス通信は、「ルーブルのボラティリティが高いのは欧米の制裁のせいだが、政府の想定通りだ」というレシェトニコフ経済相の強気の発言を報じた。レシェトニコフ経済相が為替について発言するのは異例である。

 加えて、「ロシアには為替メカニズムがないため、ボラティリティが著しく高まり、その結果、為替を安定させる金融機関もないことを理解している」とも述べたのだが、正直すぎる発言である。為替管理は経済省ではなく、財務省・中央銀行の仕事。暗に金利と為替レートはほぼ無関係と批判したのも同然だ。