AIへの大型支援を決断した高市早苗首相(12月17日撮影、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
日本政府による1兆円支援の意味
日本政府は、AIを国家運営の中核に据えるという、はっきりした意思を示しました。
時事通信などによると、日本が国産のAI開発に5年間で1兆円規模の支援を計画しているというのです。
ソフトバンクなど日本企業十数社が出資して新会社を設立、それに対して経済産業省が支援する予定だといいます。
日本が強みを持つ製造業などの産業データを生かして基盤モデルを開発して企業に開放、産業ごとの用途に応じて活用できるようにするようです。
工場内にある自動化設備、例えばNC工作機械や無人搬送車、ロボットなどもAIが操作する「フィジカルAI」の開発も行う予定だそうです。
日本の産業をAIを使って鍛え上げ、競争力を格段に上げようという取り組みですが、今回の政府の動きを景気対策や産業振興を目的とした、よくある成長戦略だとみなすと大局を読み違える危険性があります。
私は、今回の政府の決断は行政の意思決定や制度設計、政策運用の前提そのものを、AIを軸に組み替えようとする試みだとみています。
やや大袈裟に言えば、日本はAIによって国家のかたちを変えようとしていると言っていいでしょう。しかもその変化は、国民向けサービスの改善よりも前に、行政の内側から始まろうとしていることが注目点です。
ここに、今回の政策の本質があるからです。
報道ベースでは、政府が打ち出したAI関連施策は総額で1兆円規模とされています。金額だけを見れば、大規模な研究開発支援や補助金政策に見えるかもしれません。
しかし、今回の特徴は施策の対象が行政の内部構造にまで踏み込んでいる点にあります。
この方針を主導しているのは、政権中枢でAI政策を強く推進してきた高市早苗首相です。
高市首相の基本構想は、特定の技術分野を育成するというより国家運営の前提を作り替えるという発想が前面に出ています。