見えてきた日本の勝ち筋

 さて、日本の勝ち筋についてもう少し広げて考えてみたいと思います。

 日本が基盤モデル開発で米中に後れを取ったという指摘は正しい部分もありますが、これはあくまで競技場の一つにおける指摘にすぎません。

 フィジカルAIという競技場では、むしろ日本のアドバンテージが極めて大きいのです。

 理由は3つあります。

 第1に、日本は現場を知っています。

 物を観察する文化、細部への感性、人間の動きを尊重する姿勢。これはAI時代のロボット開発において欠かせない視点です。

 第2に、日本は制御が強い。

 TRON、産業用制御システム、企業で言えば産業用ロボットやNC工作機械の大手であるファナック、安川電機の技術は世界最先端であり、これはAIだけでは絶対に代替できない領域です。

 第3に、日本は抽象化が巧みであるという点です。

 Rubyに象徴されるように、複雑な技術を人間に寄り添う形にまとめ直す能力は、シリコンバレーからも高く評価されています。

 特に私は、日本の現場を歩いていて痛感するのですが、現場の人たちは自らの仕事の意味を深く理解しているということです。