サムスン電子がAI用に開発した次世代の広帯域メモリー「HBM4」(12月4日撮影、写真:ロイター/アフロ)
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 米中による技術覇権争いが激化する中、自国の経済安全保障と文化的自律性を守るため、独自のAI基盤を構築する「ソブリンAI(Sovereign AI)」の動きが世界的に加速している。

 先月下旬(11月24日)、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、韓国がこの分野での主導権を握るべく、官民一体となった巨額投資とインフラ整備に乗り出したと報じた

 特定の超大国プラットフォーマーへの依存リスクを回避し、AIインフラを「国家の重要資産」として再定義する動きが、2025年の暮れを迎え、実行フェーズへと移行しつつある。

韓国、AI予算を3倍増 「1日の遅れは1世代の遅れ」

 報道によると、韓国政府は2026年のAI開発予算を前年比で約3倍となる約68億ドル(約1兆1000億円)に引き上げる方針を打ち出した。

 さらに、AIを含むハイテク戦略産業向けに、今後5年間で約1020億ドル(約15兆9000億円)規模の「国家成長ファンド」を設立する計画だ。

 背景にあるのは、AI技術における自律性の欠如が、将来的な国家競争力の喪失に直結するという強い危機感だ。

 韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は先月、「AI時代において1日の遅れは1世代の遅れを意味しかねない」と述べ、国を挙げた対応の緊急性を強調した。

 この戦略の中核を成すのが、計算資源の物理的な確保だ。

 韓国政府は米エヌビディア(NVIDIA)製の最先端GPU(画像処理半導体)を26万基調達する契約を締結した。

 これらは政府主導のデータセンターや、地元のソフトウエア大手が運営する施設に配備され、国家規模の大規模言語モデル(LLM)構築の基盤となる。