中国は尖閣諸島を台湾の付属島嶼と主張

 まず、中国が譲れないとする外交政策は「1つの中国」原則である。

 台湾は中国の不可分の一部、台湾問題は中国の内政問題であり、外国勢力による中国統一への干渉や台湾独立を狙う動きに強く反対する立場から、両岸問題において武力行使を放棄していない。

 それらの趣旨から、中国と国交を樹立する場合は、台湾との断交を条件とする「樹交原則」を他国に強いている。

 モンテビデオ条約(国家の権利および義務に関する条約、1933年、於・ウルグアイ)は、国家資格の要件として①明確な領域、②恒久的住民、③政府(統治機関)および④外交能力(外国との関係を結ぶ能力)の4つを挙げている。

 中国は、「1つの中国」原則に基づき、台湾の外交能力を妨害し、国家要件を剥奪して国際空間から締め出そうと躍起になっている。

 その結果、蔡英文前政権下で、外交関係があった22か国のうち10か国が台湾と断交し、現在では12か国に減少している。

 そして、2005年に制定された「反国家分裂法」第8条では、「平和統一の可能性が完全に失われた場合、非平和的方式やその他の必要な措置を講じなければならない」と規定している。
 
 一方、1972年の沖縄返還に際し、中国外務省は我が国に対し「沖縄返還協定に対する抗議声明」(1971年)を発表した。

 その内容は、釣魚島(魚釣島の中国名)は、明代に中国の海上防衛区域に含まれており中国台湾の付属島嶼であること、中国と琉球とのこの区域における境界線は赤尾嶼(大正島)と久米島との間にあること、そして日本政府は日清戦争を通じてこれらの島嶼を搾取したと主張するものであった。

 また、2012年には「釣魚島-中国固有の領土」という文書を発表し、カイロ宣言、ポツダム宣言、降伏文書を根拠に、釣魚島は台湾の付属島嶼として中国に返還されるべきと主張した。

 さらに同年、「釣魚島白書」を発刊し、釣魚島は中国固有の領土であり、中国は釣魚島の主権を守るために断固として闘うと明言した。

 なお、カイロ宣言およびポツダム宣言、降伏文書は、台湾および澎湖島を中華民国に返還するとしており、中台双方の主張の正当性を判断する上で、極めて重要なポイントである。

 つまり、中国は、魚釣島を中心とする尖閣諸島は台湾の付属島嶼であると言い張っている。

 そして、それを根拠に海警局艦船等が尖閣諸島周辺の接続水域内入域や領海侵入を実行動をもって繰り返しており、特に台湾の武力統一には間違いなく尖閣諸島が含まれる、ターゲットになると考えておかなければならない。

 さらに、最近、中国の論調には、琉球(沖縄)が歴史的に中国の属国であり、日本による「侵略」で奪われたという主張がある。

 中国国営メディアがこの主張を強め、歴史的「証拠」として明時代の勅書などを紹介し、日本の領有権に疑問を呈し、日本を揺さぶるプロパガンダも行っている。

 これは中国の地域覇権戦略の一環と見られ、「台湾有事は日本有事」との認識をより強めなければならない論拠の一つでもあろう。