中国の経済的威圧、3つの特徴
高市発言は引き金に過ぎない。中国の「怒りの運用」は国内政治と対外戦略の両面で構造化されている。国内ナショナリズムの管理、中国共産党の正統性強調、外務官僚は強硬姿勢を定期的に可視化しなければならない内部的なインセンティブとも結びつく。
怒りをゼロにする弱腰は選択肢にないのだ。
オーストラリアの研究者らの調査では中国による経済的威圧事例の特徴が3つ挙げられている。(1)制裁を公式に報復と認めることはない、(2)中国側に跳ね返る自傷コストを最小限に抑える、(3)標的国の特定企業に損失を集中させる――という点だ。
衆院予算委員会の質疑で、木原稔官房長官(右)と言葉を交わす高市早苗首相=12月11日(写真:共同通信社)
まず中国が制裁を公式に罰や報復と認めることはない。輸入停止や通関遅延を「安全基準」「検疫上の問題」「消費者の自主的判断」と説明する。世界貿易機関(WTO)ルール違反を回避すると同時に標的国に法的・制度的な反撃の足場を与えないためだ。
カナダが中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)幹部を拘束した後のカナダ産菜種輸入停止は公式には「有害物質の検出」が理由とされた。台湾代表処を認めたリトアニアは中国の税関システムから事実上「消去」されたが、中国側は制裁そのものを否定し続けた。