海外での対策事例

 例えば英国では、海外からの着信が国内の固定電話番号を装うケースへの対策として、通信事業者がブロックする要件が整備されています。

 さらに銀行などが疑わしい送金を遅延できるようにし、最大72時間まで調査や確認の時間を確保する仕組みが導入されています。

 ここで大事なのは、AIが怪しいと言ったら即遮断という乱暴な話ではないことです。

 止める時間を制度として許容し、その間に確認と説得を行い、被害を食い止める設計になっています。

 またシンガポールでは、SMSの送信者IDを登録制にし、登録されていない送信者IDをブロックする仕組みを義務化しました。

 さらにフィッシング詐欺を念頭に、金融機関と通信事業者の責務を整理する共同責任の枠組みも整備されています。

 届いてから注意するのではなく、届きにくくする。偽装の流通を絞る。
この順番がはっきりしています。

 オーストラリアでは、日本の消費者庁と公正取引委員会を合わせたような独立行政機関であるACCC(Australian Competition & Consumer Commission=オーストラリア競争・消費者委員会)の下に「National Anti-Scam Centre(国家詐欺対策センター)」が置かれ、官民のデータ共有を軸に対策を進めています。

 さらに、企業が詐欺インテリジェンスを共有し、当局が他の企業や組織などへ詐欺事件の概要や対応などの資料を配布して全体で詐欺の遮断に取り組むというエコシステム型の設計が示されています。

 注意喚起だけに閉じず、組織横断で被害を食い止める方向へ踏み込んでいるのが特徴です。