AIを駆使した詐欺師の狙い目

 次に高齢者のデジタル利用の増加が特殊詐欺を増やしている可能性に触れたいのですが、ここには誤解されやすい点があります。

 65歳以上のネット利用は一定程度進んでいる一方、年齢階層が上がるほど利用率は大きく下がります。これは自然な傾向です。

 問題はその利用状況が一様ではなく、できる人とできない人の差が若い人に比べて大きいことです。

 差が大きい社会では、詐欺側は相手の反応を観察して、楽な相手を選べます。電話だけで完結する型で動く相手もいれば、SMSで偽サイトに誘導される型で動く相手もいるでしょう。

 相手がスマホ操作に慣れていればデジタル型へ、慣れていなければ電話型へという具合に、手口を切り替えれば、詐欺の成功率は上がる可能性が高くなる。

 この適応が、今は非常に速くなっているのです。なぜ速くなったのでしょうか。詐欺側がAIを使い始めたからです。

 文章生成は言い回しの品質を底上げし、音声合成は説得力を増し、相手の反応に合わせた台本を作りやすくします。

 AIを駆使し組織化された詐欺は、もはや人の勘だけで勝てる相手ではなくなってきています。止める側も、仕組みで対抗しなければAI武装した詐欺グループには勝ち目がありません。

 ここで参考になるのが、海外の対策だと思います。様々な国で様々な対応が取られているので、それらが日本に適用できないか少なくとも検討してみる価値はあると思います。

 もちろん、国ごとに規制文化は違うので、簡単には日本に導入できないかもしれません。ただ、仕組みで届きにくくする、仕組みで詐欺に遭ってから被害が具体化する前に止める時間を確保する、という点は多くの国で共通しているので日本には特に参考になるはずです。