「第4期ヒョリム未来女帝最強戦」で公式戦初優勝を飾った仲邑菫四段(写真提供:韓国棋院)
(内藤 由起子:囲碁ライター)
日本囲碁界最年少の10歳0カ月でプロ入りした仲邑菫(なかむら・すみれ)四段。13歳11カ月で女流棋聖を獲得するなど数々の最年少記録を打ち立て、「囲碁界の“令和のヒロイン”」とも称される存在だ。2024年3月には日本人として初めて韓国棋院に移籍し、2025年11月には22歳以下の若手棋戦である第4期ヒョリム未来女帝最強戦で公式戦初優勝を飾り、韓国でも本格的に存在感を示しつつある。その現在地について、韓国出身で韓国囲碁界に精通する洪清泉(ほん・せいせん)四段に話を聞いた。
6歳で全国優勝、9歳で韓国修行へ──“天才少女”の原点
まずは仲邑菫四段のこれまでの歩みをざっと振り返っておきたい。
仲邑四段は2009年3月2日生まれ。3歳で囲碁を覚え、5歳のときに関西アマ女流囲碁名人戦Bクラスで優勝、6歳では未就学児を対象とする「渡辺和代キッズカップ」で優勝するなど、幼い頃から頭角を現してきた。小学生ながら女流アマ囲碁全国大会の関西予選を突破して本戦に出場するなど、「天才少女」として早くから囲碁ファンの注目を集める存在だった。
公式戦デビューの「第29期竜星戦」予選を前に笑顔を見せる仲邑菫(2019年4月22日、写真:共同通信社)
2018年、一家で韓国・ソウル市に移り住み、韓鐘振(ハン・ジョンジン)九段が主宰する囲碁道場で本格的な修行を開始。同年5月には韓国棋院のプロ候補生である研究生となる。韓国の厳しい競争の中で腕を磨いていた仲邑菫に、日本棋院が大きく動いた。
世界で勝てる棋士を育成する目的で新設された「英才特別採用推薦棋士」制度。その第1号として仲邑菫を迎え入れ、2019年4月、日本棋院所属プロ棋士としてのキャリアがスタートした。まだ10歳0カ月、当時の日本囲碁界最年少記録である。
