デビュー黒星から17勝7敗へ──『英才枠』の面目躍如
プロデビュー戦は、第29期竜星戦予選での公式戦。約40社100人もの報道陣が詰めかける異例の注目度の中での一局だったが、結果は黒星スタートとなった。それでもそこからは順調に白星を重ね、2019年シーズンは17勝7敗。同期入段13人の中で最多勝利・最高勝率と、「英才採用」にふさわしい結果を残している。
その後も着実に実力をつけ、2022年には博多・カマチ杯女流名人戦で史上最年少のタイトル挑戦者となった。
藤沢里菜女流名人にストレートの2連敗を喫しタイトル奪取はならなかったものの、三番勝負の内容は大きな話題を呼んだ。同年の扇興杯女流囲碁最強戦でも決勝に進出したが、牛栄子四段に敗れて準優勝。つめかけた多くの報道陣を前に、悔しさで涙が止まらなかった姿は印象に残っている。タイトルには手が届かないものの、常にあと一歩というところまで勝ち上がる存在となっていた。
そして2023年2月、第26期ドコモ杯女流棋聖戦の挑戦手合三番勝負で、当時女流棋聖だった上野愛咲美を2勝1敗で破り、ついに初タイトルを獲得する。13歳11カ月での戴冠は、史上最年少記録である。
同年9月には、韓国棋院に客員棋士として移籍することが発表される。日本のプロ棋士が海外の棋院に正式に移籍するのはこれが初めてのケースだった。2024年2月の女流棋聖戦では、上野梨紗に敗れてタイトルを失冠するが、その直後の3月、いよいよ韓国棋院所属として本格的に韓国での公式戦に臨むこととなる。
仲邑菫女流棋聖に挑戦し奪取したシリーズの上野梨紗女流棋聖(2024年2月、筆者撮影)