韓国女子ランキング4位、全棋士約400人中100位前後という現在地
日本にいると、仲邑四段の韓国での活躍はタイトル戦決勝まで進出しないかぎり大きく報じられず、棋界内でも詳細な評価が伝わりにくい。そこで、韓国出身で韓国囲碁界にもパイプを持つ洪清泉四段に、現地での仲邑菫の位置づけを聞いた。
芝野虎丸名人就位式にて、道場の子どもたちとお祝いに駆けつけた洪清泉四段(右)(2023年12月、筆者撮影)
まずは数字を確認しておこう。韓国に移籍して以降の公式戦成績は、集計サイトなどによれば、
【2024年】83勝49敗(勝率約63%)
【2025年】80勝47敗(勝率約63%/11月時点)
とされている。2年連続で年間120局以上を戦い、勝率6割台前半を維持しているのは立派な数字だ。韓国棋院には約400人の棋士が所属しているが、その中で総合ランキングは100位前後、女子では4位につけるとされている。
洪四段は、こうした数字の背景にある日本との「対局環境」の違いを次のように説明する。
「韓国では、テレビ棋戦を中心に持ち時間1時間前後の早碁がほとんどです。国際棋戦の予選などでないと2時間以上の持ち時間で打つ機会はほとんどありません。早碁で一つ一つの対局時間が短いので、手合いがつけば毎日のように打てます。そのため、結果として対局数が非常に多くなるのです。
一方、日本の主な棋戦は持ち時間3時間、リーグ戦などでは5時間の長時間戦が中心です。1日がかりの碁を休みなく打つことはとても体力が要るので、週に多くても2局程度となっています。特に若手の公式戦などの対局数が少ないことは、日本の育成面での弱点だと私は思います」
2024年の日本棋院公式戦で最多対局数だった藤沢里菜女流本因坊でも80局にとどまることを考えると、仲邑四段の年間120局超という数字は、韓国が棋士に碁を多く打たせるようにしていることがよく分かる。
女流名人を失冠した直後の藤沢里菜女流本因坊(2025年4月、筆者撮影)