国民へのまなざしと御歌、国際親善が映す現在地

 かつては笑顔の奥にわずかな陰りが宿っているように見えた時期もあったが、今年はその面影をほとんど感じさせない。新年一般参賀では、陛下と揃って一礼された後の弾むような笑顔が印象的で、参賀者へ向けたまなざしには「よく来てくださいました」という気持ちがそのまま表れているようだった。

 歌会始では、陛下と歩まれた30年の歳月を、英オックスフォード大学での思い出に重ね、

「三十年(みそとせ)へて 君と訪ひたる英国の 学び舎に思ふ かの日々の夢」

 と詠まれた。青春時代の景色を陛下と重ねて振り返られたことで、「若き日のように、自分らしさを取り戻したい」という静かな願いが芽生えたのかもしれない。

 さらに今年は、大阪・関西万博(4月13日~10月13日)のために来日した、デンマーク、スウェーデン、オランダの国王など各国の王族を御所に招き、夕食やお茶をともにしながら心を込めたおもてなしをされた。雅子さまの語学力と落ち着いた応対は訪問客を感嘆させ、豊かな国際性を自然体で発揮される場面が目立った一年でもあった。

大阪・関西万博で国連館を視察される天皇皇后両陛下(2025年10月6日、写真:代表撮影/共同通信社)

 4月には、東京都心から約1200km南に位置する硫黄島(いおうとう)を初訪問された。日米合わせて約3万人が命を落とした激戦地であり、両陛下が深く頭を垂れる姿からは、戦後80年の節目の重みが感じられた。

硫黄島訪問を終え、海上自衛隊硫黄島航空基地から出発される天皇皇后両陛下(2025年4月7日、写真:代表撮影/共同通信社)

 6月、両陛下は長女・愛子さまとともにご一家で、沖縄を訪問。

「はじめて3人そろって沖縄県を訪れることができ、嬉しく思います。(中略)はじめて訪れた愛子も苦難の道を歩んできた沖縄の人々の歴史を深く心に刻んでいました」

 ご一家で沖縄のかりゆしウェアをお召しになり、雅子さまは愛子さまがご一緒だったことがとても頼もしかったことだろう。

首里城(沖縄県那覇市)正殿の復元の様子を視察された天皇皇后両陛下と長女愛子さま(2025年6月5日、写真:代表撮影/共同通信社)

 両陛下の車が到着すると、愛子さまがドアの側に立って両陛下を待ち受けていたが、雅子さまは降りられると一瞬、愛子さまをご覧になって優しく微笑まれていた。愛子さまに雅子さまがアイコンタクトされ、軽く頷かれているご様子にもお二人の仲の良さを垣間見ることができた。

 愛子さまは社会人となられ、両陛下とご公務をともにされる機会が増えた。雅子さまにとって、まさに愛子さまは心強い味方でいらっしゃるのだろう。

 以前に比べてお元気になられたのは、愛子さまという愛娘の存在は大きいはずだ。