須崎御用邸で静養するため伊豆急下田駅に到着し、集まった人たちに声をかけられる天皇、皇后両陛下と長女愛子さま=8月1日夜、静岡県下田市(写真:共同通信社)
目次

 天皇陛下御一家が、静岡県下田市にある須崎御用邸で静養されている。

 8月1日午後8時半過ぎ、天皇ご一家は静岡県の鈴木康友知事などが待つ伊豆急下田駅に到着された。駅では大勢の市民や観光客が出迎え、両陛下と愛子さまはひとりひとりと目線を合わせながら笑顔で声を掛けられた。天皇ご一家が須崎御用邸で静養されるのは、コロナ禍の影響もあり6年ぶりのことだという。

 その報道を見て、筆者は1997年に天皇ご一家が静養のために須崎御用邸で静養していたときの取材を思い出した(肩書は当時のもの)。

 この取材では、忘れられぬ「スクープ」に遭遇したのである。

こちらの写真は今から7年前のもの。須崎御用邸近くの海岸で、拾った貝殻を手にされ笑顔の天皇ご一家=2018年8月16日(写真:共同通信社)

苦し紛れに提出したプランが…

 お盆前、筆者が在籍している週刊誌編集部では毎週恒例の企画会議があった。そこに提出する適当なプランが無かった筆者は、思いつきで「須崎御用邸に天皇ご一家、皇太子ご一家が集合……」という企画案を提出した。何かハプニングがあったらページになるだろうという手前勝手な企画で、具体的な内容なぞ何もない。だから、「絶対にボツになるだろう」と計算して出したものであったのだが、なぜか編集長からGOサインが出てしまった。

 そうなってしまうと、プランを出した本人としてとりあえず現地の下見くらいはするしかなく、天皇ご一家が滞在する予定の前に、須崎の御用邸の周辺に一人、車で向かうことにした。都内から下田へはおよそ170キロ。

 ところが、である。都内から下田へは、まずは高速道路を利用し、その後、小田原すぎから伊豆の東海岸に沿って下道を南下していくのだが、海岸線の道路は渋滞で全く車が動かない状態だった。

 それもそのはず。夏休みのお盆シーズンという、行楽地に向かう道路が一番混むときに東伊豆の海岸線を車で南下していくのだから、渋滞していない方がおかしい。通るはずがないと思っていたプランが通ってしまって動転してしまい、つい渋滞予想を読み違えてしまっていた。お陰で、海水浴に向かう家族連れの車に挟まれ、真夏の灼熱の太陽に照らされながら、何時間もハンドルを握るしかなかった。