昨年5月、史上最年少の24歳3カ月で通算200号を達成した村上宗隆(写真:共同通信社)
MLBウインターミーティングの季節が再び巡ってきた。今年は12月7日(日本時間8日)から米フロリダ州オーランドで11日(同12日)まで行われる。
MLBの各球団幹部が一堂に会し、来季の陣容を固める“事実上の国際交渉の舞台”とも言える同会議は、毎年のことながらスポーツビジネスの力学と地政学的な思惑が交錯する独特の緊張感に包まれる。今年、そこにひそやかに流れている主要テーマの一つが日本から海を渡ろうとしている2人のスラッガー――今オフにポスティングシステムを申請し、メジャー移籍を目指す東京ヤクルトスワローズ・村上宗隆と読売ジャイアンツ・岡本和真の「評価の実像」である。
ともにNPBを代表する大砲であり、看板の重みは申し分ない。村上は「令和の三冠王」、岡本は「伝統球団・巨人の4番打者」。日本国内では並べて語られることが多く、お互いに仲もいい両雄が海を越え、MLB市場に投げ込まれた瞬間、その評価軸は全く異なる方向へ動き始める。
試合前に談笑する村上宗隆と岡本和真(写真:産経新聞社)
破壊力は疑いようがない村上だが
今冬のストーブリーグ市場で見えてきたのはNPBの序列とは必ずしも一致しない、米国特有のアナリティクス文化とスポーツ資本主義が生み出す“別の評価地図”だ。
村上が持つ破壊力は疑いようがない。NPB史上最年少での三冠王獲得という勲章は、米球界関係者にとっても象徴的なシグナルだ。加えてMLBがアジア市場、特に日本を重要なビジネス領域として位置づけている現実を踏まえれば「村上級のスターの輸入」はリーグにとって政治的・商業的価値を兼ね備えた国家間シグナルでもある。
しかし今オフの米国サイドの声を丹念に拾っていくと、その評価は必ずしも一枚岩ではない。懐疑と期待が複雑に絡み合いながら、揺れ動いているのが現状である。
