原油の供給過剰はほぼ確実に

 供給過剰は海上輸送量の増加として実際に現れている。
      
 欧州調査企業ケプラーによれば、海上で輸送中の原油は11月下旬時点で約13億バレルと前年に比べて22%も多くなっており、新型コロナウイルスのパンデミック初期の2020年5月以来の高水準となっている。海上輸送量は事実上の原油在庫として解釈できるため、世界の原油がだぶついていることの証左だというわけだ。

 このような状況を踏まえ、専門家の間で「地政学的緊張が原油価格に与える影響力は小さくなっている」との見解が有力になりつつある。

「在庫は低水準であり、市場は均衡している」と主張し、原油価格を上昇させたいOPEC(石油輸出国機構)にとって好ましくない展開だ。 

 OPECとロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは11月30日のオンライン会合で11月初めに発表した来年第1四半期の増産停止の方針を確認した。

 OPECプラスは「第1四半期の原油需給が緩む傾向にあることを踏まえた時限的な措置だ」と強調しているが、説得力に欠けると言わざるを得ない。OPECプラスは「日量200万バレルの協調減産を来年末まで続ける」とする従来方針を維持するとしており、原油価格を長期にわたって下支えする必要性を示しているからだ。

 筆者が注目したのは、OPECプラスが今回の会合で2027年以降の加盟国の生産基準値を設定するための評価手法を承認したことだ。