手の打ちようがない行政処分の不通知

直子さん:区役所に行っても、「虐待の疑いがある」と言われ、会わせてもらえませんでした。しかし法律に詳しい方に尋ねたところ、もし本当に虐待で保護するなら事前に行政処分の通知があるはずだと伺い、それを指摘すると区役所は「本人が会いたくないと言っている」とか「個人情報保護のために会わせられない」と理由を変えてきました。

西岡:面会制限についてですが、「高齢者虐待防止法」は虐待を受けた人と虐待をした家族の面会を制限できると定めていますが、この法律を巡り全国でトラブルが発生しています。「虐待していないのに面会制限されて親と会えない」「子どもと会いたいのに会えない」などという声が相次いでいます。

 それを受けて、厚生労働省がマニュアルを改定し、面会制限については行政処分のひとつとして虐待を受けた人と虐待をした人双方に文書で通知をしなければいけないとなりました。そのため、江東区は虐待と言わなくなり、「本人が会いたくないと言っている」や「個人情報の保護」などと言うようになったということです。

 ご家族は江東区役所に「行政処分の通知を出してほしい」と求めていますが、区側は一度も通知書を出していません。通知書がなければ、行政処分の不服申し立てもできず、実質的に手の打ちようがない状態です。

(後半に続く)

【高齢者連れ去り・江東区①】97歳女性を自治体が誘拐?警察が令状なしでカギを壊し…娘も連絡取れず行方不明
【高齢者連れ去り・江東区②】任意同行した警察署から消え、区側は一切の面会を拒否…虐待ないのに、なぜ?
【高齢者連れ去り・江東区③】区長権限で勝手に弁護士を成年後見人に、母娘の関係を無視する支離滅裂な行政対応

◎「高齢者の連れ去り事件」の連載は、調査報道グループ「フロントラインプレス」がスローニュース上で発表した記事を再構成し、その後の情報を付け加えるなどしてまとめたものです。事案の詳細はスローニュースで読むことができます。
https://slownews.com/menu/291166