フリーランス記者・西岡千史さんの解説、孫の直子さん(仮名)の証言はYouTubeチャンネル「INNOCHAN」でご覧ください。連れ去りの衝撃映像は3:19付近から。前編も公開中。チャンネル登録もお願いします。
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 今年3月に江東区で起きた「高齢者連れ去り」事件。97歳の武田和子さんが突然アパートに乗り込んできた警察官らに連れ去られ、それ以来消息が途絶えています。

 ニュースの真相に迫るYouTube新番組「ニュースの現場」では、事件を取材してきたフロントラインプレス所属の西岡千史記者と被害者の孫で、連れ去りの当日現場に居合わせた「後藤直子さん(仮名)」に話を聞きました。後半は、この事件に潜む疑問点について議論します。

(前半)【高齢者連れ去り・江東区:孫の証言①】97歳女性を警察官が…住居侵入の衝撃映像、記者と孫が語る、いったい何が?

※JBpress公式YouTube新番組「ニュースの現場」での内容の一部を書き起こしたものです。詳細な全編はYouTubeでご覧ください。(収録日:2025年10月29日)

高齢者連れ去りは行政による冤罪の判断

益田美樹・ジャーナリスト(以下、敬称略): 今年3月に警察官らが江東区に住んでいた97歳の女性・武田和子さん宅に突然押し入り、連れ去るという衝撃的な事件が起きたということですが、この事件はなぜ起きたのでしょうか。

武田和子さんのアパートの一室に鍵を壊して侵入する警察官(孫の後藤直子さんが撮影した映像より)

西岡千史フリーランス記者(以下、敬称略):一言で言うと、行政機関による冤罪事件だと思っています。警察や検察の冤罪事件はこれまでにも報道で何度もありましたが、今回の場合は役所が非常に強い権限を持つ「高齢者虐待防止法」という法律により、行政側が「虐待を受けた」と判断して家族と会わせないという事態が起きています。認定が間違っていた場合に、行政側が誤りを認めず、トラブルが長引いたり拡大したりするケースが全国で起きています。

武田和子さんの孫・後藤直子さん(仮名):この法律は「区役所や社協(社会福祉協議会)の職員が必ず善良で法律通りに動く人だ」という前提で作られているように思います。

 高齢者虐待防止法や「成年後見人制度」などについても、家族は悪いことをする可能性がある一方で、行政側にはその可能性はないという前提で法律が作られています。「虐待の恐れがある」というだけで何でも許されてしまう。

 私たちは虐待などしていないのに、虐待の恐れがあるという理由で鍵を壊し、部屋に侵入して、祖母をどこかへ連れ去って居場所を教えてもらえない。法律にもう少し条件などを付けるべきではないかと感じます。