全国に被害者、高齢者の人権軽視
益田:この事案は江東区だけで起きている問題ではなく、全国でも同様のトラブルがあるのですか。
西岡:はい、私が取材した範囲だけでも、港区で少なくとも3件ほど同様のケースがありました。あるケースでは80代の女性が家に帰りたいと訴え続けていたにもかかわらず、医師が「妄想だ」と判断し、そのまま精神科病院に入院させられたそうです。
その人は虐待を受けていないのに「虐待を受けた」として、そのまま成年後見人がつけられていました。後にわかったことですが、被害者が「連れ去られた」と主張しても認知症の妄想と診断されていました。高齢者の人権がいかに軽視されてきたかが浮かび上がる事例です。
連れ去られたまま亡くなった方もかなりいらっしゃいます。東京都だけでなく神奈川、千葉、埼玉、福岡など、全国的に発生しています。
皆さん本当に苦しんでいて、行政がこんなことをするなんて一般の人には考えられないことなんです。家族が相談しても「それはあなたが虐待していたんでしょ」と言われて、被害者の二次被害が続いています。
ただ最近は各地で被害者同士がつながって、被害者の会などもできてきています。今後、どのような形で対応が進むか注目されるところです。
【高齢者連れ去り・江東区①】97歳女性を自治体が誘拐?警察が令状なしでカギを壊し…娘も連絡取れず行方不明
【高齢者連れ去り・江東区②】任意同行した警察署から消え、区側は一切の面会を拒否…虐待ないのに、なぜ?
【高齢者連れ去り・江東区③】区長権限で勝手に弁護士を成年後見人に、母娘の関係を無視する支離滅裂な行政対応
◎「高齢者の連れ去り事件」の連載は、調査報道グループ「フロントラインプレス」がスローニュース上で発表した記事を再構成し、その後の情報を付け加えるなどしてまとめたものです。事案の詳細はスローニュースで読むことができます。
https://slownews.com/menu/291166
