AIは研究フェーズから実装フェーズへ

 一昨年、私はシリコンバレーでスタートアップの創業者と意見交換する機会がありました。

 彼はモデルの性能はすでに十分で、今後勝つ企業はAIをどれだけ早く業務に組み込めるかで決まると話していたのです。

 実際、米国の航空会社では問い合わせの大部分をAIが処理し、金融機関ではローン審査の自動化が急速に進んでいます。

 欧州の一部自治体では、住民サービスの1次対応をAIが担い、職員の負担が大幅に低減された事例もあります。

 こうした流れを受け、日本政府もようやくAI研究よりもAI実装を重視する方向へ舵を切り始めました。

 今回の補正予算が示しているのは、日本企業がAI実装の波に乗り遅れると、国際競争力を急速に失うという危機感です。

 AIを使える企業と使えない企業の格差は、過去のどの技術革新よりも速く、深刻に広がっていきます。

 AIと半導体がセットで語られる理由は非常にシンプルです。

 巨大AIを動かすには膨大なGPUとデータセンターが必要で、そのコストの源泉は半導体供給力にあります。

 半導体の供給が安定し、国内生産が増えれば、AIクラウドの利用コストは中長期的に下がります。

 TSMCの熊本工場の稼働は、まさにその象徴です。