半導体価格はAIの血圧?

 国内で先端半導体にアクセスできる体制が整えば、日本企業はAI活用のコストを抑えつつ、より高度なシステムを導入しやすくなります。AIを社会基盤として機能させるための前提条件が、半導体投資なのです。

 私は以前、半導体業界に長く携わってきた知人に、GPU価格とAIクラウドの料金の関係を聞いたことがあります。

 彼は、半導体価格はAIの血圧みたいなものだと言っていました。

 確かに、半導体の価格が下がればAIの利用料も下がり、企業全体の生産性も改善されていきます。

 AI投資の議論で見落とされがちなのが、AI導入企業と未導入企業の間で生じている格差の急拡大です。

 AIを使っている企業では、営業資料の作成時間が10分の1になり、顧客対応は24時間AIが行い、社内の書類作成は数分で完了します。

 一方、AIを使っていない企業は、同じ作業に何倍もの時間を費やしているのです。

 先日、建設業の社長と話した際、社員がAIを使い始めてから見積作成のスピードが劇的に上がったと言っていました。

 数字の計算や文書化をAIが担当し、人間は判断だけに集中できるようになったためです。

 こうした事例は全国で増えており、AIを使える企業と使えない企業のスピード差は、もはや取り返しのつかないレベルに近づきつつあります。

 私は40年の間、数多くの技術革新を見てきましたが、ここまで企業間の格差が急速に広がる技術はほかにありません。

 AI導入の決断が遅れれば遅れるほど、競争の土俵にすら立てなくなる恐れがあります。

 今回の補正予算を経営者視点で読み解くと、結論は非常に明快です。AI導入は任意ではなく必須の経営判断になったということです。

 18.3兆円という前例のない規模の補正予算は、政府が日本全体の生産性を底上げするためにはAI以外に選択肢がないと判断した証拠です。

 そしてこの流れは、企業にも同じ決断を求めます。

 中小企業であっても、地方企業であっても、AIを活用しなければ生産性の向上は難しくなっていくでしょう。

 AIは大企業の専用技術ではなく、むしろ人材不足に悩む地方企業にこそ効果が大きい道具です。

 今回の補正予算がもたらす最大の意味は、日本企業がAI時代へ本格的に踏み出すための土台が整ったことです。

 その土台をどう活用するかは、経営者の判断にかかっています。

 次回は、この補正予算を踏まえて企業がどのようにAI導入を進めるべきか、特にCAIOの役割やカスタムGPTが経営の中心課題となりつつある理由を、実例を交えながら詳しく解説します。