利用者には見えにくいが避けられない構造問題とは?

 自動運転・無人運転の進捗状況を見ていくと、その実現には踏切の廃止やホームドアの整備といった、鉄道を安全に運行するための環境整備がきわめて重要であることが分かるだろう。

 自動運転・無人運転は、鉄道会社の今後を考えるうえでも非常に重要な取り組みだが、それは鉄道事業者の都合でしかない。利用者目線に立つと、安全かつ時間通りに目的の駅に到着できれば有人運転だろうが無人運転だろうが特に気にしないというのが本音だろう。

 その意味では自動運転・無人運転の技術開発は利用者に評価されづらいとも言えるが、地方の路線バスや地方鉄道は運転士不足によって減便や運休といった事態が相次いでいる。減便・運休は利用者に不便を強いるだけではなく、地域の経済活動を妨げる悪影響も及ぼす。

 東京・大阪といった大都市圏でも同じような事態が起きれば、ひいては日本全体の経済が停滞し、私たちの日常生活を脅かすことにもつながる。そうした事態を避けるためにも、自動運転・無人運転が必要不可欠な取り組みであることを強調しておきたい。

 今後、山手線はその実験場としての役割を担うことになる。