英国の国民負担率は過去最大に
今回の予算案で労働党政権は、2年連続となる大規模な増税は見送っている。一方で、様々な税率を引き上げており、国民負担率は過去最大となるようだ。当然、国民や企業の政府への評価は手厳しい。スタグフレーションの時代にそれを促すような経済運営に突き進んでいるのだから、労働党政権に対する風当たりが強まるのは当然である。
しかし、これでも労働党政権の陣容は、9月に行われた内閣改造で中道に寄っていた。そもそも解散総選挙が行われない限り、労働党は2029年8月まで政権を担当できる。とはいえ、2026年5月に首都ロンドンを含む大型の地方選を控える中で、左派政策を突き進むだけでは民意が離れるとスターマー首相が判断したようだ。
一方で、労働党とスターマー首相の支持率は低迷が顕著なため、新たな指導者を担ぐべきだとする動きもくすぶる。秋の予算案が発表される直前には、国営放送BBCが報じたように、スターマー降ろしの動きが実際にあったようだ。ここで意識されるのが、中道寄りよりもさらに左派的な志向を強い指導者が新たに擁立されるリスクである。
繰り返しとなるが、負の供給ショックに伴うスタグフレーションに際して、左派政策はご法度である。一般的に、左派政策が有効なのは需要ショックが生じたときだ。そもそも英国の経済は、2008年のリーマンショック以来、いわゆるG7の中でも生産性パズル(生産性の伸びが著しく低いこと)の問題が深刻であったことで知られている。
その後、2020年のコロナショックにブレグジットショック(欧州連合<EU>からの離脱に伴う輸入の圧迫に伴う負の供給ショック)を経て、供給サイドはますます圧迫されることになった。英国の首都ロンドンの物価は大陸諸国の首都、例えばパリやフランクフルトに比べて著しく高いが、それは一連の負の供給ショックに基づくものだ。