2025年10月、旭日小綬章受章が決まったゲームデザイナーの堀井雄二。『ドラゴンクエスト』のキャラクター、スライムのぬいぐるみと 写真/共同通信社
目次

(乃至政彦:歴史家)

発売中のリメイク版『ドラクエI&II』。新たなプレイアブルキャラクター・サマルトリアの妹が大人気だ。だが38年前、彼女には「兄の仇として主人公を刺し殺す」衝撃の没シナリオが存在した。なぜその結末は回避されたのか? そして、その影響は? 当時の「鬱展開=名作」という風潮と、JRPGの歴史を変えた堀井雄二の決断を考えてみよう。

『ドラゴンクエストI&II』リメイク発売

 2025年10月30日、『ドラゴンクエストI&II』のリメイク版が発売された。

 私のプレイ時間はそんなに長くなく、真エンディングまでの到達時間は、Iが15時間、IIが40時間ほど。

 個人的には、コンピュータゲーム作品の中で、ファミコン版『ドラゴンクエストII』(エニックス、5500円、1987年1月発売)がマイベストであり、そのリメイクとしては満点の面白さであった。

 さて、そのファミコン版『ドラゴンクエストII』には、その先の日本のRPG(JRPG)の歴史を決定づけたシナリオライター・堀井雄二(本年11月、旭日小綬章を受章)の決断があった。

 今回は、38年前の作品がどんな役割を果たしたかを考えてみよう。