写真/西村尚己/アフロ
目次

JBpressで掲載した人気記事(前後編)に加筆修正したものです(初出:2020年12月4日、12月7日)。

(歴史家:乃至政彦)

 劇場版「無限城編」が公開中の『鬼滅の刃』。シンクロナスのコンテンツ「歴史の部屋」でお馴染みの乃至政彦さんが、歴史家ならではの視点で、作品世界の「歴史の謎」に挑みます。

 最終回に登場した『善逸伝』は、本当に善逸が書いたのか? 鬼殺隊はなぜ「非公認」のまま活動できたのか? 無惨のあの「パワハラ会議」に、実は超合理的な戦略が隠されていたとしたら? 物語最大の謎、無惨と産屋敷家の千年の因縁の起源とは? 最強の鬼・無惨が、なぜついに「千年王国」を築けなかったのか……。

 作品を愛する著者が、歴史という補助線を引くことで導いた考察をお楽しみください。

*人気漫画や映画の考察に定評のある乃至政彦さんが歴史家ならではの視点で、作品世界の「歴史の謎」に挑んだ『歴史家が紐解く「鬼滅の刃」の世界』の続きをシンクロナスにて配信中です。こちらもぜひお楽しみください。

はじめに

 『鬼滅の刃』は、何度読んでも新しい発見がある、本当に面白い物語である。

 家族や仲間を想う心、困難に立ち向かう意志の強さに胸を打たれる一方で、読み終えた後、ふと「あれはどういうことだったのだろう?」という、心地よい疑問符が心に残る。

 歴史業に関わる私も、皆さんと同じ一人のファンにすぎない。ただ職業柄、物語の“行間”に隠された歴史や背景を、つい探ってしまうクセがある。

 歴史研究で使う謎解きの道具を片手に、この壮大な物語の世界で本気で遊んでみよう──というのが、本書の始まりである。本書の元となった一連の原稿は、あくまで個人の趣味が高じたものだが、どうせなら読者の皆さんとこのワクワクを共有したい。そんなサービス精神と、ささやかながら作品解釈への貢献を願って書き進めた。

 本書では、作品世界の「歴史の謎」に挑んでいく。

 最終回に登場した『善逸伝』は、本当に善逸が書いたのか?

 鬼殺隊はなぜ「非公認」のまま活動できたのか?

 無惨のあの「パワハラ会議」に、実は超合理的な戦略が隠されていたとしたら?

 そして、物語最大の謎、無惨と産屋敷家の千年の因縁の起源とは? さらには、最強の鬼・無惨が、なぜついに「千年王国」を築けなかったのか……。

 本連載の考察は、歴史という補助線を引くことで見えてくる、一つの解釈にすぎない。これが絶対の正解だと言うつもりは毛頭ない。ぜひ軽い気持ちでページをめくり、皆さんも自分だけの「?」を見つけて、謎解きの旅を楽しんでいただければ幸いである。

※なお本連載は、著者が個人的な趣味で執筆したものであり、原作漫画の出版社である株式会社集英社、ならびにアニメ製作関係各位とは一切関係ありません。