「600店・売上高1200億円」構想とGSマネーの狙い
課題は、バーガーキングファンが増えているにもかかわらず、その期待に応える店舗数がまだまだ足りていないことだ。BKJHDではこれまで直営店が主力だったが、24年には10年ぶりとなるフランチャイズ(以下FC)店の出店を再開している。出店ペースを早めるにはFC展開の強化・拡大が不可欠だからだ。
FC出店再開と前後して野村氏が発案したのが、24年2~3月にかけて実施した「バーガーキングを増やそう」キャンペーンである。これは、消費者からバーガーキングが出店するための空き家情報を募り、成約した場合には情報提供者に10万円を進呈。成約に至らなくても、情報提供者には漏れなくクーポンを配信するというものだ。
BKJHDにとっても、店舗開発のための物件リサーチにかかるコストや手間をある程度軽減できるうえ、消費者から空き家物件情報を集めることで「どこでバーガーキングの需要が高いのか」といったマーケティング精度も上がる。消費者も運営会社も得をする妙案と言っていい。
実際、そこから今日までの出店ペースは、前述したコロナ禍期間と比べてもむしろ加速している。そしてBKJHDが当面の目標に掲げるのが、28年末までに600店を達成することだ。現在のほぼ2倍の店舗数をあと3年で実現するとなれば、年間100店近い出店ペースになる計算で、売上高1200億円規模も視野に入る。
今後のハイペースな成長には当然、今以上の投資資金が必要になる。そうした状況下で明らかになったのが、前述した香港の投資ファンドから、アメリカの投資銀行大手ゴールドマン・サックス(以下GS)へのBKJHDの譲渡だ。買収金額は推定で700億円規模と見られている。
投資ファンドである以上、出口戦略としてどこかの段階で保有企業を転売するか、もしくは株式公開するといった選択を取ることになる。昨年3月に野村氏を取材した際、ファンドの出口戦略や時期についてはこう言及していた。
「彼ら(アフィニティ・エクイティ・パートナーズ)が世界で投資している企業30社あまりの中で、当社の業績パフォーマンスは最上位群だと思います。それだけ高成長しているので、(BKJHDの)株式はもう少し継続保有するというスタンスなのでは。もちろんいつかは出口戦略を取るはずですし、売り先が、将来的なこともまた考えていくのでしょう」
GSはこれまで海外では外食企業への投資実績もあるものの、日本における投資対象は消費財企業が少なく、それも道路舗装大手のNIPPOやマンション管理大手の日本ハウズイングなど、上場企業の非公開化に向けた案件が目立ってきた。今回BKJHDを手中に収めたことで、将来的にはさらに企業価値を高めたうえでの株式公開といった選択肢も見えてくる。
まずはBKJHDが目指す3年後の600店体制と売上高1200億円規模の達成に向けて、GSの潤沢な資金的後方支援やガバナンス面でのテコ入れが注目される。