マック・モス・ケンタ・サブウェイも戦線拡大で総力戦へ

 一方で、当然ながらほかのファストフードチェーンも戦線拡大を図る。最大手の日本マクドナルドホールディングスはともかく、野村氏が「追いつき追い越せ」と見据える2番手集団のモスフードサービスや日本KFCホールディングスも攻めの姿勢を強めている。

 前者のモスフードで言えば、25年11月の中間決算説明会で、同社役員が「レギュラー商品、プレミアム商品、超プレミアム商品の3層のグラデーション価格戦略を今後も強めて客単価を引き続き上げていく。これまでほとんど実施してこなかったM&A戦略も国内外で積極的に検討していく」と説明している。

モスバーガーの店舗看板(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 後者の日本KFCは、長年大株主であった三菱商事が手を引き、代わりにアメリカの投資ファンド、カーライル・グループ傘下(買収総額はおよそ1300億円)となったことで24年9月にいったん上場廃止となった。現在、日本KFCは東名阪エリアを核として30年度をめどに1700店規模までの拡大を目指すとされており、こちらも積極的な出店戦略を打ち出している。

ケンタッキーフライドチキンの店舗(写真:VTT Studio/Shutterstock.com)

 ちなみにカーライル・グループは、19年に野村キャピタル・パートナーズと共同でオリオンビールの株式を取得し、25年9月にはオリオンビールが株式上場を果たしている。日本KFCについても、いずれは再上場か転売といった出口戦略を取る可能性が高いだろう。

 さらに、1991年にサントリーが設立したサンドイッチチェーンの日本サブウェイは、その後マスター・フランチャイズ契約の終了に伴いサントリーが事業から撤退し、米サブウェイ本社側の日本法人に運営が移った。

 24年にはワタミがこの日本サブウェイ合同会社の全持分を取得すると発表。サブウェイはピーク時約480店から現在は約180店まで縮小しているが、ワタミは長期的に、現在のマクドナルドの店舗数と同等の、国内3000店舗規模を目指すという野心的な構想を掲げている。

「SUBWAY」の日本事業を買収したワタミの渡辺美樹会長(右)/写真:共同通信社)

 少子高齢化と人口減少が今後も進む日本にあって、ファストフードチェーン各社の攻めの展開が、すべての企業にとって等しく成長につながるとは限らない。中長期的にはパイの取り合いとなるゼロサムゲームの様相を強める可能性が高い。コロナ禍期間には店舗家賃も大きく下がったが、現在は不動産価格の高騰もあり、費用対効果に見合う出店立地の確保は、今後さらに激しい争奪戦となっていくだろう。

 また、ファストフードチェーンに限らず、FCビジネスは右肩上がりの成長局面では大きな問題が表面化しにくい一方で、業績が足踏み、ないし後退局面に入ると、フランチャイザーとフランチャイジーの間で摩擦や軋轢が起こりやすい。成長のためにアクセルを踏み込むほど、将来的なリスク管理も重要になる。

 三つ巴、四つ巴のファストフード“最終戦争”は、まだ序章に過ぎない。これから各社は生き残りを賭けて本当の意味で競い合うフェーズに入っていく。