本稿の核心にかかわるため、まず一点を正確にしておく必要がある。
大谷のWBC起用をめぐるさまざまな制限案を水面下で検討しているのはMLB本体ではなく、あくまでも大谷の保有球団であるドジャースだ。
ドジャースのロバーツ監督(左)とタッチを交わす大谷翔平(写真:共同通信社)
ドジャースはこれまで一貫して日本人メジャーリーガー3選手・大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希のWBC参加に慎重姿勢を示してきた。
理由は単純かつ明確である。
打者はもちろんのこと、投手としても大谷はチームの資産であり、MLBの球団経営においても唯一無二の存在であるため、WBCの短期集中型フォーマットに全面的に引き渡すことはできないという判断だ。
ドジャースはWBCでの「大谷酷使」を懸念、MLBはWBCへの「大谷参加」を大歓迎
ドジャースのライバルチームに籍を置くナ・リーグ球団関係者の1人は、こう漏らす。
「大谷は今季後半から投手として復活したばかり。ドジャースが最も恐れるのは開幕前からの早期酷使による再故障だ。
WBCに関しては、MLBではなくドジャースが制限案を主導している。これが事実だ。
一方でMLBはMLB Advanced Media(MLBAM)とともにWBCの大会運営組織『WBCI』に出資し共同運営する立場。スーパースター・大谷のWBC参加は歓迎すべきことと受け止めている。
とはいえ大谷がWBCへ参加するに当たって何らかの制限を受ければ、ネットフリックスの参入で放映権料も膨らむなどドル箱になりつつある大会人気に支障をきたす恐れが強いことから、その流れは決して望んでいない。
だからMLBとしてもドジャースの姿勢には困り顔で、難しい立場に置かれているとも言える」