佐々木は当初マイナー契約を結んだため、その限りではない。一方で大谷と山本については、ドジャース側は入団時に締結した大型契約上、本人たちがWBC参加を望んだ場合「NO」とは言えない。
ただ、大会参加にあたって派遣選手に関する起用法など母国の代表チームに対して細かい制限をかけたり、ドジャースにとって都合のよい方向へ導くために所属球団の立場を利して本人たちを「WBCに無理して出場すれば、パンクしかねないから絶対に出ない方がいい」などと裏で“懐柔”もしくは“説得”したりすることは当然ながら可能だ。
やや複雑な構図だが、つまり大谷を巡る“制限交渉”の主役はMLBではなく、その資産価値を最大限守りたい「球団=ドジャース」にある。
WBCでの「大谷起用法」、有力視される2つのパターン
では、そのドジャース主導の投手起用における制限案とは具体的に何か。ささやかれている「イニング」や「球数」の限定など複数案の中でも、特に有力視されているのは次の構図だ。
【(1)二刀流は準々決勝ラウンド(現地時間2026年3月13、14日・米フロリダ州ローンデポ・パーク)以降のみ解禁】大谷を「投手」としてWBCに投入するのは、東京ドームで行われる一次ラウンド(プールC・同年3月5~10日)ではなく、米国フロリダで行われる準々決勝以降に限定する――という案である。
東京ラウンドでの大谷の参加そのものは容認しても「打者に限る」という制約付きのシナリオは、侍ジャパン側にとって致命的な痛手となる。
なぜなら大谷の「二刀流そのもの」が侍ジャパンの象徴であり、戦力の根幹だからだ。
さらに、より過激な案として囁かれているものもある。
【(2)1次ラウンドには帯同せず、準々決勝ラウンドからのみ合流】つまり大谷が日本では侍ジャパンに加わらず、プールCを勝ち抜いて突破したチームが米国に戦いの場を移してから、ようやく参戦する――という極端な選択肢だ。
WBCのルールでは各代表チームでロースターとして30人の登録ができ、メンバーの入れ替えは原則故障者が出た場合のみだ。しかしながら別途、あらかじめ投手に限っては「指名投手枠(Designated Pitcher Pool)」が設けられており、最大10人まで登録が可能でラウンドごとに投手2人を入れ替えて起用することができる。
侍ジャパンは過去の大会で同ルールを適用したことは一度もないが、これに則れば1次ラウンド突破時に大谷を誰かと入れ替える形で米国での準々決勝ラウンドから合流させることは理論上できる。