「秩父夜祭」の見どころ
そしていよいよ、夜祭のお話である。この祭は江戸時代中期、この付近で盛んになった絹織物の市「絹大市」の発展とともに盛大に行われるようになったという。秩父は蚕を育て、絹織物で潤った土地なのだ。「付け祭」と呼ばれる華々しい山車の引き回しなどが神社本体の神事に付随するものとして広まり、今に伝わっている。
現在、山車には2基の笠鉾と4基の屋台があり、いずれも「動く陽明門」と言われるほど華麗な装飾が施されている。笠鉾は神の依り代としての要素も持っており、本来は三層にもなる高い笠を立てて造り花を垂らすのだが、明治以降、電話線や電線の導入により市中引き回しができなくなったため、現在は屋台と同じような形で曳かれている。
12月2日、3日とも、午前中からこれらの山車が市中を巡行し、夜には花火が打ち上げられる。2日は前夜祭に当たる宵宮で、山車は4基、花火の打ち上げは夜8時ごろに終了だ。3日が本祭で六基の笠鉾、屋台が勢ぞろい。それらが夕方に秩父神社を出発し、10時ごろに御旅所に到着。それが秩父祭のクライマックスだ。
華々しい冬花火の中、独特なリズムで打ち鳴らされる太鼓と提灯を掲げた人々の勇壮なかけ声が重なり合う。そんな夢幻のような光景の中、きらびやかな笠鉾や屋台が、団子坂と呼ばれる急坂を次々に曳き上げられるシーンが圧巻だ。祇園祭や高山祭の優雅さとはまた違う、豪壮で血沸き肉躍る祭である。
最後に実際に夜祭見物に行かれる方へのアドバイスを少々。12月2日は比較的混雑が少なめだし、終了も早いので、東京方面の方も比較的楽に帰って来られる。エッセンスを味わいたいならこの日でも十分だろう。しかしやはり本祭の3日に行きたい方は、車だと駐車場に困る場合もあるようなので電車がおすすめだ。遅くなっても臨時便が出るため、大混雑はするが、帰れなくなることはまずない。深夜までじっくり堪能したい方は防寒の準備も忘れずに。ただし、あまりの熱気で寒さなど忘れてしまうかも知れないけれど。


