GPシリーズ、フィンランド杯で優勝した鍵山優真 写真/共同通信社
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(松原孝臣:ライター)

全身全霊を込めて、魂で滑る

 鍵山優真は、今シーズンのテーマに「Step by Step」を掲げて歩んできた。

「目標や夢をかなえるには着実に一歩ずつ進んでいくのがいちばんの近道だと今までの経験から感じています。自分は幼少期からそんなに結果を出せるような選手ではなかったと思っていますが、それでも基礎の部分などゆっくりと着実に、一つずつできるものを練習し、いろいろな技を身につけ、それを実戦で生かして、と目標や計画を立ててやってきたのが今の自分につながっています」

 10月、こう語っている。

 掲げたテーマを実践するように、7月に最初の大会に出場すると、それに続き8月も国内大会に、9月にはチャレンジャーシリーズのロンバルディア杯と、多くの試合に出場を続けてきた。

 迎えたグランプリシリーズ、鍵山にとっての初戦は11月上旬のNHK杯。ショートプログラムはトップに立つが「スケート人生で初めて」と言うスピンのミスがあり、100点には届かなかった。

 翌日のフリーでは2本目のジャンプの4回転トウループで転倒。それでもその後は立て直し2位。合計得点は287.24点、佐藤駿をわずかにおさえて優勝、大会3連覇を果たした。

 グランプリシリーズ2つ目の試合は、最終戦のフィンランディア杯。

 ショートプログラムは思いがけない出来となった。4回転サルコウの転倒、トリプルアクセルの乱れが出て88.16点の3位、国際大会では2021年11月のグランプリシリーズ・イタリア大会の80.53点以来となる80点台にとどまった。

「やらかしちゃった思いがあります」

 悔しさは隠せなかった。

 続くフリー。

「ショートプログラムの悔しさがあったので、全身全霊を込めて、魂で滑ろうと決めていました」

 ミスもあったが、巻き返し、逆転で優勝、グランプリファイナル進出を決めた。