悪質な「職業後見人」が野放し状態
現在、政府は成年後見制度の見直しを進めており、2026年の通常国会で民法改正案を提出することを目指している。議論を進めている法務省は今年6月、法制審議会がまとめた中間試案を公表した。そこでは、制度の利用終了や後見人を交代しやすくする案が出ている。しかし、成年後見制度に詳しい「後見の杜」の宮内康二代表は、こう批判する。
「最高裁判所は2019年、親族から後見人を選ぶことが望ましいと各家裁に通知しましたが、その後も弁護士や司法書士などの職業後見人は増え続けています。その間、職業後見人による財産の横領や不適切な業務の事例が相次ぎました」
「しかし、法務省の中間試案は後見人を弁護士などにする前提で、改正案は家庭裁判所の責任を軽減し、職業後見人がビジネスをしやすい方向に進んでいくと思われます。後見制度の利用者調査もほとんど実施されていません。法制審議会の委員は悪質な専門職後見人のひどさを実際に経験しない限り、利用者の悔しさは理解できないのではないでしょうか」
後見の杜・宮内代表
知らないうちに自分が住む自治体によって成年後見人が付けられて、家族や友人と会えなくなる。一度、後見人がついた高齢者は、何を言っても意見は認められない。家族は居場所を教えてもらう権利もない。財産の横領や不適切な管理があっても、家族がそれに気づくことすら難しい。
全国で相次ぐ自治体による高齢者連れ去りは、高齢者の自己決定権を軽視し、後見人に絶大な権限を与えている成年後見制度の欠陥が要因となっている。制度を根本から見直すべき時期に来ているが、その動きは弱い。
◎「高齢者の連れ去り事件」の連載は、調査報道グループ「フロントラインプレス」がスローニュース上で発表した記事を再構成し、その後の情報を付け加えるなどしてまとめたものです。事案の詳細はスローニュースで読むことができます。
https://slownews.com/menu/291166



