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 品質向上やコスト削減、販売台数など、常に高い目標を掲げながら、それらを愚直に達成していくトヨタ自動車。圧倒的な現場力を支える強さの源泉はどこにあるのか。『1日1話、読めば心が熱くなる365人の人間学の教科書』(藤尾秀昭監修/致知出版社)から一部を抜粋。現場を奮起させ、より強い組織へと発展させるトヨタ流の経営手法について、『現場論』の著者でシナ・コーポレーション社長の遠藤功氏とOJTソリューションズ専務を務めた海稲良光氏が明かす。
※本記事に記載の人物の肩書は、月刊『致知』掲載当時のものです。

トヨタの「歩き回る経営」
――遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

 会社の経営指導で一番長く付き合ったのがトヨタ自動車でした。トヨタの多くのプロジェクトに携わる中で気づいたのが、まさに現場力の重要性です。多くの企業が立派な戦略を立てても実行できずに結果が出せない一方で、トヨタはあれだけの大企業であるにも拘らず、やり切る力があるんです。

 もちろん経営者も立派なのですが、やはり現場の当事者意識が高くて、最後まで自分たちでやり遂げるという圧倒的な現場力を見せつけられました。コスト削減にしても、品質向上にしても、販売台数にしても当然、高い目標を掲げ、絶対に弱音を吐かない。それを通して、現場力は経営の根幹部分であり、醍醐味でもあることを実感したんです。

 トヨタの現場力が高い最も大きい要因は、やはり経営陣の現場に対するリスペクトです。例えば、社長さん自身が「俺は偉そうに社長なんかやっているけれども、車一台つくれない。つくってくれているのは現場の君たちなんだよ」と常にリスペクトを続けていて、それによって現場が発憤していく。トヨタの経営陣は現場の動かし方が実にうまいんですね。トヨタにはそういう伝統が受け継がれています。