「高齢者連れ去り」は全国で多発している
交流会を主催した「成年後見と家族の会」の代表で広島県に住む石井靖子さんも、成年後見人によって面会妨害を受けてきたという。
「成年後見制度の問題が広がるにつれ、この会の存在を知った人たちからの問い合わせが増えています。最近では特に、自治体職員によって家族との面会を妨害されている相談が多くなってきました」
後見制度と家族の会、石井さん(西岡撮影)
この問題を取材しているフロントラインプレスにも、同様の情報が次々と寄せられている。
「母親を介護してきたのに、証拠もないまま『虐待している』と言われ、親と会えなくなった」「役所の職員に何を言っても居場所を教えてくれない」「このままでは母親は骨にされて帰ってくることになる」――。
こんな声が途切れないのだ。いずれも「自治体職員に何を言っても『家族との面会禁止』を解除してくれない」と口を揃える。高齢者に残された人生の時間は少ない。かけがえのない時間を肉親や友人らと一緒に過ごしたいと思うのは当然ではないだろうか。
「成年後見と家族の会」に寄せられた相談やフロントラインプレスが取材で得た情報を総合すると、自治体職員が関与した高齢者の連れ去りによって肉親らが被害を訴えている件数は、少なくとも20件に達する。フロントラインプレスが報じた東京都の江東区や港区だけでなく、東京23区の他区、千葉県、神奈川県、大阪府、和歌山県、福岡県などにも広がっている。
それをまとめたのが下の一覧表である。ただし、「成年後見人が面会を妨害しているが、自治体の関与があいまいなケース」の相当数は、一覧から除外している。一方、連れ去りが疑われるケースが全国各地に広がっていること、および、被害を訴える声が今も途切れないことなどを考えると、一覧表のケースは氷山の一角にすぎないと思われる。

一覧のケースにおける背景事情は様々だが、取材を進めていくと、おおむね3つの段階を経て事件は進んでいく点で共通項がある。