ジジババが怒っているマイナンバーの呪い

 現代の呪いの一つに「マイナンバーは秘密」というものがある。その呪縛が解けないため、いまだにマイナンバーが活用できない社会になっている。

 その元凶は、日本人に染みついている「お上」意識にほかならない。国は誰のものか、民主主義とは何かをまったく理解せず、自分たちは番号で管理される被支配者という意識のままだ。権力を手放せば、番号などなくとも権力は国民を監視し始めることもわかっていない。

 こうなると国家基盤である国民や土地の管理も絶望的だ。戸籍も不動産登記もマイナンバーが使えない。そのため土地所有者も相続人もわからず、外国資本による所有実態もわからない。そのたび実態を把握しようと、現場では膨大な紙が飛び交うことになる。

 マイナンバーで実態の把握ができないと、「年収の壁」問題も結局は自分の首を絞めることとなる。無駄な行政事務は隠蔽され、医療データは他人と紐付けられ生命が危険に晒される。元号がデータ品質を低下させ、漢字の標準化もできずに、データ利活用というお経ばかりが虚しく唱えられる。

 やるべきことはすでに決まっている。しかし、マイナンバー導入時がそうだったように、年金の受給資格を失う犠牲者が出るまで誰も何も動かなかった。現場では皆この事実を知っていたにもかかわらずだ。私は見ていない、私は知らないという現場の一人一人の無責任な態度が悲劇を招く。いまこそ、勇気をもって目覚める時である。

 自動車業界では、法的根拠のない(まるで足のない幽霊のような)組織が公的手続きを独占している。これはOSS(自動車保有関係手続のワンストップサービス)にまつわる奇々怪々な手続きの話である。

 とにかく複雑怪奇な仕組みになっている。関連する公的機関だけでも国交省、警察庁・都道府県警、総務省・地方税共同機構、国税庁、都道府県税事務所、運輸支局・自動車検査登録事務所があり、業界団体は自工会、自販連、全軽自協、JAIA、JU、AIRIAなどがひしめき合っている。

 そして、これらが各システムを保有して相互接続するだけでなく、自治体や民間のシステムもこれに乗り入れる。各法制度の所管もバラバラ、手数料・税金・料金もバラバラな状態で未整備のままになっている。

 特に軽自動車に関しては、公的な行政手続きであるにもかかわらず、全軽自協という民間団体が手続きを独占し、法令に定めのない申請書類を要求している。しかも、全軽自協の申請拒否運用は法的根拠を欠くだけでなく、救済制度が未整備という法的欠陥が放置されたままだ。

 何十年も前からこのことは指摘されているのに、改善の糸口すら見えてこない。このような状況でDXを叫んだところで、どうやって合理化・効率化できるというのか。DXの前提としてBPR(業務プロセス改革)すべきだとしたり顔で言う輩がいたら、是非やって見せてほしい。