台湾有事を巡る高市首相の発言に、中国は態度を硬化させている(写真:つのだよしお/アフロ)
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
需給改善に水を差す日中関係
2026年の為替見通しについて、問い合わせが増える季節になってきた。詳しくは論点ごとに議論する必要があるが、依然、筆者は円の需給環境を主軸に見通しの方向感を定めていきたいと考える立場だ。
実は、2025年の円の需給環境はパンデミックや戦争を受けた異常な状況からようやく脱しつつあり、円安に歯止めがかかる期待が持てそうな状況にあった。貿易赤字の動きを見ておくと、過去最悪を記録した2022年(約▲20兆円)と比較すれば、2025年は1~10月の合計で約▲3兆円とかなり改善している。
ただ、入れ替わるように高市政権が発足し、リフレトレードが横行する中で円安が再起動しているというのが現状だ。この点は残念な状況と言わざるを得ない。
円の需給環境を展望するにあたっては、急速に悪化している日中関係の影響も踏まえる必要がある。
既報の通り、中国外務省は11月14日、自国民に対して当面の間、日本への渡航を自粛するように呼びかけた。既に、中国の複数の大手旅行会社が日本旅行の販売を停止したと報じられており、解禁されたばかりの日本の水産物輸入を再停止する方針も示されている。
台湾有事が集団的自衛権を行使可能な「存立危機事態になり得る」とした高市首相の国会答弁への対抗措置である。